猟銃所持許可・更新の悩みどころ「知人7名の壁」と、厳格化する審査をどう考える?
銃を持つための手続きの中で、警察が行う「身辺調査(背景調査)」は非常に重要なステップです。ここ最近、新規申請や更新の際に「7名程度」の知人を挙げるよう案内されるケースが全国的に増えています。
「そんなにたくさん名前を挙げられない…」と悩む方も多いと思いますが、なぜこれほど人数が求められるのか、そして揃わない場合はどうすればいいのかを解説します。
1. なぜ「7名程度」も必要なの?(長野の猟銃事件と規制強化の背景)
これまでも身辺調査は行われていましたが、近年「7名程度」とより多くの知人を求められるようになった背景には、令和5年に長野県で発生した痛ましい猟銃事件があります。
この事件を極めて重く受け止めた警察庁は、全国の警察に対して以下の通達を発出しました。
【通達名称】 猟銃等の所持許可のための調査及び審査の実施要領について(通達)
【通達番号】 警察庁丁保発第81号(令和6年6月18日)
【概要抜粋】 「近年、所持許可をした猟銃を悪用した凶悪事件が発生したことを踏まえ、より一層的確に調査及び審査を行うため、その実施要領を別添のとおり定めたので、各都道府県警察においては、実施要領に沿った運用がなされるよう徹底されたい。」
この通達により、これまで現場の裁量に委ねられがちだった身辺調査の範囲が全国レベルで明文化され、かつてないほど厳格化されました。警察が未然に防ごうと最も警戒しているのは、「社会的な孤立」や「周囲との潜在的なトラブル」「精神的な不安定さ」を見落とすことです。
そのため、単に人数を集めるだけでなく、申請者の生活を多角的な視点から確認するため、以下のような異なるグループから名前を挙げてほしいという意図があります。
-
近所の方(2名程度): 日々の生活の様子、家庭内のトラブルや近所トラブルがないか
-
職場の方(2名程度): 仕事場での人間関係、勤務態度や責任感
-
友人・趣味の仲間(3名程度): 遊びや趣味を通じた性格、お酒の飲み方やカッとなりやすい面がないか
2. 知人が7人いないと「失格」になる?
ここで一番お伝えしたいのは、「知人を7人用意できないこと」自体は、法律で直ちに定められた欠格事由(銃を持てない理由)には当たらないということです。
例えば、二十歳になったばかりの方、仕事の関係で引っ越してきたばかりの方、あるいは定年退職して人間関係が整理された方が、いきなり7名の「銃の所持に理解があり、警察からの電話に対応してくれる知人」をリストアップするのは、物理的に難しいこともあります。
ただし、注意も必要です。人数が足りないからといって即座に弾かれるわけではありませんが、警察が「十分な身辺調査ができず、安全に銃を管理できるか確認できない」と判断すれば、抽象的な欠格事由(他人の生命や公共の安全を害するおそれ)に該当するとみなされ、許可が下りないリスクはあります。だからこそ、事情がある場合は放置しないことが重要です。
3. 困ったときは、まずは警察に相談を
もし、どうしても人数が揃わない場合は、一人で抱え込まずに管轄の警察署(生活安全課)の担当官に相談しましょう。
「最近引っ越してきたばかりで、近所に詳しい人がいない」「定年退職して何年も経つため、職場関係者が挙げにくい」など、今の自分の状況を正直に伝えることが大切です。
警察側も、ただ機械的にルールを押し付けるのが目的ではなく、「あなたのことを客観的に話してくれる人が誰か」を探しています。事情を話すことで、「それなら、趣味の仲間を少し増やしましょうか」「ご親族の中で、別居している方はいませんか」といった代替案をもらえることも少なくありません。
4. 知っておきたい「手続きのルール」
実は、私たちの社会には「行政手続法」や各自治体の「行政手続条例」という、手続きを公平に進めるためのルールがあります。
これらは、「役所や警察が独断で手続きを止めてはいけない」「不合理な理由で申請の受理を拒んではいけない」といったことを定めた、申請者を守るための法律です。警察による身辺調査の厳格化は社会の安全を守るために不可欠ですが、窓口での「7名書いてください」という要請は、審査を円滑に進めるための行政指導(協力のお願い)という側面もあります。
そのため、「7人揃わないと書類すら絶対に受け取らない」といった窓口対応は、本来これらのルールの趣旨から外れる可能性があります。警察もこのルールを理解した上で業務を行っています。「対立」するのではなく「相談」という形で、お互いに納得できる落とし所を見つけていくのがスムーズな解決への近道です。
まとめ:一人で悩まず、専門家を頼ってください
通達による厳格な空気に圧倒されて、銃を持つことや続けることを諦める必要はありません。
-
人数はあくまで「多角的な調査のための目安」であること
-
揃わないときは、正直な理由を添えて警察に相談できること
-
手続きには公平なルール(行政手続法・条例)があること
この3点を心に留めて、まずは身近な人から名前を借りられないか検討してみてください。
そして、どうしても行き詰まったときや、警察とのやり取りで不安を感じたときは、当事務所や銃砲店へお気軽にご相談ください。書類作成のプロとして、そして日々銃を扱う実務家として、安全に正しく銃と向き合うための手続きをサポートいたします。一歩ずつ、確実に進めていきましょう。